もう一つの地球が見つかる日 ---系外惑星探査の最前線
レイ・ジャワルダナ[著]、阪本芳久[訳]
草思社、2012年発行 2,200円



 原題は"Strange New Worlds --- The Search For Alien Planets And Life Beyond Our Solar System"である。原題の方が内容をよく示している。9章からなる。
  1. 数千年の問に答えが出る瞬間
  2. 太陽と惑星はどのように生まれたか
  3. 系外惑星探査、苦難の時代
  4. 定説をくつがえすホット・ジュピターの発見
  5. マイクロレンズ法とトランジット法による大進歩
  6. 恒星とも惑星とも言いがたい天体の発見
  7. はるか彼方の惑星の姿を画像に捉える
  8. 「もう一つの地球」発見競争の始まり
  9. 地球外生命を見つけるにはどうすればいいか


 最近の技術の進歩は目を見張るものがある。50年前には夢物語にすぎなかった太陽系外惑星の存在が明らかになっただけでなく、その数は2012年には750個を越え、画像までとられているというのであるから。
 ホット・ジュピターやスーパー・アースの発見は新聞でも報道されたのである程度の知識はあった。技術の進歩により、惑星の引力による主星(太陽)のわずかなふらつきがドップラー効果による光の波長の変化として観察できるようになったということまでは知っていた。また、系外惑星の画像が得られたということも知っていた。しかし、相対論の現れである星の重力によるマイクロレンズ効果で系外惑星が発見されていること、惑星が主星の全面を通過することによるわずかな明るさの落ち込みを観測して系外惑星の存在を証明することも、「ここまで出来るのだ」とただただ感心した。系外惑星はもはや珍しい存在ではないらしい。
 惑星系の形成理論は、惑星系として太陽系しか知られていない時代に形作られて来たから、主星(太陽)に近いところに地球型の岩石惑星が存在し、遠くに木星型のガス惑星が存在するという太陽系タイプの惑星系が典型的な惑星系とされ、研究されて来た。しかし、現実には、系外惑星では、主星のごく近くを公転するホットジュピターが数多く見つかっている。公転周期は1日から数日程度というのが多いそうで、軌道半径は0.05天文単位(1天文単位は太陽と地球の平均距離。ちなみに太陽から水星までは0.4天文単位である。)程度らしい。このようなホット・ジュピターは今までの惑星系形成理論では作ることが出来ない。惑星形成理論は再検討を迫られている。インターネットで「系外惑星」を検索したところ、名古屋大学の研究チームが「ハイブリッドシナリオ」というのを提案して、惑星系の形成を論じているという記事を見つけた。私が理解した範囲では、「主星の近くにホット・ジュピターが作られるのはよくあることであるが、その外側には惑星が容易に成長できる環境が作られる。ある程度の大きさ(地球程度でいいらしい)の惑星が出来ると、その惑星に押される形でホット・ジュピターは主星に落ち込んでしまうらしい。ホット・ジュピターがなくなったあとは今までの惑星系形成理論に従う。また、ホット・ジュピターの外側に十分大きな惑星が作られないときはホット・ジュピターが残る。この場合は、ホット・ジュピター以外の惑星は小さすぎて地球からは観測できない。ホット・ジュピターの周辺には他の惑星が見られないという観測結果がうまく説明できるという。」ということらしい。
 その他、銀河系で一番多いタイプの恒星は「赤色矮星」であること、恒星である「赤色矮星」と「惑星」の中間程度の「褐色矮星」も存在すること(これは当たり前の気もするが)、など新たな知識として受け取った。
 それほど専門知識を必要としないので、星好きの人なら十分楽しめると思う。(2014.03.22)    




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