著者は研究者ではなくサイエンスライターである。そのせいであろう、いろいろな研究に目配りして、中立的に書こうとしているのがよく分かる。しかし、研究者なら自分の研究に思い入れがあるから、このような書き方はしないだろう。科学書を読む楽しみの一つは、研究者の研究に寄せる熱意を読むことだろうと思う。そこには、書き過ぎもあるだろうし、色眼鏡もあるだろう。それを承知の上で、研究者の熱さに触れるのを楽しむのではないか。たしかにサイエンスライターによって大変よく書かれた読み物もあるが、そこには研究に対する熱さを伝える何かがある。残念ながらこの本からはその熱さが感じられなかった。 内容的には、「ダーウィンが来た」で放送されるようなものが多い。「ダーウィンが来た」には映像があるが、この本にはない。写真も少ないし、あっても黒白である。映像、カラー画像があればもう少し楽しめたかもしれない。 原題は The Genius of Birdsである。「鳥の素晴らしい能力」ということであろう。これを「知能」としたのはいかがなものか。本の中でも「これらの能力が知能といえるかどうかについては意見が定まっていない」といった説明が繰り返しなされる。渡り鳥が素晴らしい能力を持っていること、スズメが目を見張る環境適応力を持っていることなどに異論はないが、これらを「知能」というのだろうか。道具を使うからすなどはたしかに知能があるといえそうではあるが。哺乳類でも知能がある(高い)といえるのはほんのわずかな種しかいないのに、鳥類全体の「知能」を論ずるのはいかがなものか。 このタイトルは売りたいための出版社の選択だったの出はないか。私はまんまとだまされたのであった。鳥類の能力の研究の現状を知りたいという要望には、一応は応えているだろう。 目次だけでも書いておこう。
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